2004年12月31日金曜日

電子音楽in JAPAN

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電子音楽in JAPAN


本の構成は、YMOのための電子音楽の系譜という構成ではあるが、むしろ面白いのはYMOの部分よりも系譜の部分であります。
 ちょうど明日05年の50年前、55年にNHK電子音楽スタジオで生まれた電子音楽。まるで計算式で求めるかのような黎明の音楽にマッドサイエンティストのような魅力を感じます。
 電子音楽の始まりというのはクラシックというヨーロッパの格式と伝統の音楽の終着の果てであったことはものすごく魅力的でした。むしろ洗練の行き着いた先というのが電子音楽の始まりだったのでしょう。まるで試験管を扱うようなサイン波の抽出と合成の現場がインタビューから浮かび上がります。
 そして、ミュージックコンクレートといわれる今のMIDIやテープコラージュに繋がるようなもうひとつの電子音楽の歴史が未来派といわれるアバンギャルドにも繋がる20世紀の現代美術の潮流に繋がることに気づく時とても魅力を感じました。
 洗練とアバンギャルド、この二つの流れが合わさったのが55年のNHK電子音楽スタジオでありそれが日本の電子音楽の始まりだったのではないのでしょうか。
 この本は個人個人に視点を当てていて各章が進んでいくため非常に読みやすいです。
 そして、個人個人の物語としても進んでいくため、ひとつの時代が融合と反発を経て変化していっているのが面白い。やはりそれは洗練とアバンギャルドという相容れない精神が近くにいたからだからだろうか。それは非常に緊迫感を与えこの電子音楽の物語を非常に面白いものにしていました。