2003年1月17日金曜日

時間 ヴォルツガング・ライプ展/中西夏之展 2003/01/17・18

■時間

 彼の出身地ドイツへはドイツ表現主義のようなイメージを持っていたので、ドイツの芸術家というのには少し意外な気もした。ドイツ表現主義とはまた違う世界であったから。ただ、北欧の世界と言われればなるほどそうかもしれない。奈良美智のもつ雰囲気に近いと思ったが、そういえば奈良さんはドイツに留学したんだ。ドイツは今こういう色なのかもしれない。
 さて、ヴォルツガング・ライプ展を豊田市美術館で見た前日、愛知芸術文化センターで中西夏之展を見た。ついでを言うと、その日は同じ芸術文化センターで原将人のライブムービーを見ており、そのイメージペインティングということでチラシを奈良美智が担当していて、奈良という単語がヴォルツガング・ライプ展の時に浮かんだのかもしれない。、
 んー、話がそれた。で、中西夏之の作品だけど、僕は今までハイレッドセンターの中西夏之ということしか知らなかった。洗濯バサミがキャンパス一面に付けられたり、またキャンパスを離れ、見ず知らずの人の服にもくっついていく「洗濯バサミは攪拌行動を主張する」しか知らなかった。だから、最初僕の趣味とは違うと思っていたのだが、1983年から続く《紫・むらさき》シリーズ、《白・緑より白く》シリーズ、《四つの始まり》シリーズなどの作品群に惹かれてしまった。 
 「選び抜かれた色彩への特質と相互関係」という解説のとおり、選び抜かれた色彩が「姿形」を変えて展開していくのが20年というスパンで続いているのが、うーん、この人の時間てなんなんだろうと思えた。
 むしろ、時間を表現する人なのかもしれないな。

さて、そして翌日にライプの作品を見た。《ヘイゼルナッツの花粉》《ミルクストーン》《どこかで 確かさの部屋》《ライスハウス》《ライスミール》
どれも温和な作品で乳白色で包み込んだ美術館の建物にぴったりだ。
美術館に着くと、ちょうどワークショップということで「ミルクストーン
」を作っていた。「ミルクストーン」は大理石の板一面にミルクを注いでいくというもの。ミルクは表面張力で零れ落ちずに光沢を見せてくれるわけだが、その作品のデリケートさに調和と緊張を感じた。ものすごく丁寧に大理石の上に注がれたミルクをなぞって隙間を埋めていくわけだが、最後の隙間が大切なように思えるのがねらいなんだろう。ミルクの張られた大理石を下から見上げて表面張力というものを確認してみたり、指でミルクストーンを触ったときの波紋をじっと見たり。ミルクストーンを巡る世界のようなゆったりした感じがライプの時間なんだろう。ヘイゼルナッツの花粉や甘い香りの蜜蝋の部屋にしてもゆったりした時間を感じる。おそらく、花粉の採取から始まるライプの作品製作の長い時間を感じるからだろう。
 そう、気付けば3時間も豊田市美術館にいたのだった。