2001年11月4日日曜日

樹海と縄文(芦屋市立美術博物館)/二名良日 2001/11/04

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★樹海と縄文
 樹海と縄文。全く何をしているのか知らないまま、名前に惹かれ行ってみる。
 芦屋市立美術博物館のイベントは「樹海より」と「縄文遺跡に行こうよ」。 美術館で縄文遺跡というアプローチと「樹海」という言葉は想像力を掻き立てる。 (実際は、美術部門と歴史部門があったとあとで知ったのだが・・・)
 だいたい、こういう直感的に惹かれて行ったものは大概当たりを見つけるので、 なるべく行きたい。

★価値観を逆転させること
 時間軸的には逆になるのだが、コレを見たあとにスタジオボイスを読んで、 その中でオノヨ―コが「アーティストの仕事とは価値観を逆転させること」みたいなことを、赤瀬川原平の千円札裁判の評価で語っていたことを読んだとき、「樹海にて」における二名良日のアプローチを思い出した。
 そして今回の最大の収穫は二名良日という存在を知ったこと。

★芦美のこと
 時間を元に戻して、芦屋市立美術博物館の駐車場に車を止め裏側から芦美へ向かう。ピンク地の外壁が目に付く。閑静な住宅街にあった落ち着いたピンク色。ある方の日記を読んで大体のイメージを感じていたのでナルホド、ナルホドと思いつつ、ぐるっと周って入口にむかうと目に入ってきたのは、かわいい感じの外観の建物・・ではなく、竹で編んだ巨大な倒れた竹のオブジェ2点でした。よく見ると、立てられたのや、倒れたのや、芦美の建物に突き刺さっているもの、作りかけのものなど様様。オブジェは竪穴式住居のようなものを竹であんであり、建物の周りには竹の根っこが散乱しており、炭にした竹もある。石も置いてあり、それは説明書きが書いてあるので読んでみると、この芦屋の土地で採掘された大阪城の石垣の石を使ったオブジェだそう。
 かわいい感じの芦美の建物と閑静な住宅街の予定調和的な雰囲気を壊すかのようなオブジェの雰囲気にすごい美術館だなあというのが第一印象。
 あとで、竹のものに関しては「樹海にて」の企画展によるものだと知って納得。
 そして、作者は二名良日。

 建物の中は外観とは違い広い吹き抜けと白い外観の落ち着いた感じの作り。居ると落ち着く。入ってまず目についたのはホールを使った作品。ホール一面に茶色い紙が敷かれ、その上に茶色い紙で梱包されたおもちゃが置かれている。テレビも置かれテレビは土砂でおおわれテレビの中ではフィリピンの子供が何かを喋っている。これを見たときおもったのは赤瀬川さんの梱包作品の亜種だなと。
 二名良日以外で良いと思ったのはこれくらいかな。このイベントは5人の作品がからできており、会場内を侵食しあっている感じだろうか。
★縄文遺跡へ行こうよ
 2階へ上がって、別の企画「縄文遺跡へいこうよ」を見る。アプローチする者の立場の違いでこうも良さが変わってくるのだろうか。まず入り口の通路には貝塚の剥離標本。通路の両側にあって触れる!!こういう歴史展はいろいろあるけど触れるのはそうない。実際この企画では土器、石器、サヌカイトと触りたいほうだい。粘土と棒があって土器にある文様を押してみようとかいい。まず、入って目にするのが「うんこ」の化石というのもこの企画のアプローチするものをよく物語っている。子供の視点てやつかな。
 歴史家の行う展示はどうしても歴史的価値だけで語りがちで堅くなる。べつにそんなのはカタログで見ればいいのであって、展示はまず楽しくないとというのが僕の考え。そのー、ライブとアルバムの違いというか、展示はパフォーマンスなんだよという気がしていて。
 それで美術館の視点で縄文をとらえた芦美のアプローチはGOODでした。
 縄文に美術館が侵食することによって良いように変化をしている気がする。
 芦美の中庭では子供たちが遊んでいて何かあるのかなと思っていたら、「縄文ワークショップ」ということで今日は石器作りをしていたみたい。来週が「石焼料理・火おこし」、18日が石器作り(サヌカイト)」、23日が「銅鏡づくり」、24日が「勾玉づくり」。全部やりたいと思ったけど、聞いてみると対象が小学4年から高校生まで。がっかり。ていうか大丈夫だったら来たのかと言われそうだけど。
★二名良日
 2階のイスに座って中庭を眺め、パンフレットを読んではじめて二名良日の作品に気づく。そこも樹海だったのだ。一番樹海らしい展示かもしれない。
 チラシより引用
「野外活動家の二名良日は、大量の竹を前庭に運び込み、それで建てた縄文式の家屋に寝泊りしながら、竹のオブジェを増殖させ続けます。開館時間中はどなたでも自由に参加できますので、気軽に声をかけてみてください」
面白い、非常に面白い。美術館に住む!!増殖するオブジェ!!面白い。あれが家だとも気づいた。で、二名さんはどこ似るのかと思ったのだが、どうも今日はいないようで・・・。
 どうも、もう一枚のチラシによると、
◆「樹上小屋」へ行こう!◆
二名良日(ふたな・よしひ 1943年、愛媛生まれ)は本来は野外活動家です。彼が野外生活での必要に迫られ、あるいは遊びとして作り出すオブジェの数々は、時に異様なまでのスケール感をみせ、美術のフィールドからも注目されてきました。今回のイベントは、彼が近畿各地の森林にて製作中の「樹上小屋」(ツリーハウス)を作者とともに訪れ、一緒に増改築を楽しもうというものです。
とあって11月4日は淡路大磯アート山で活動中のようでした。
ちなみに11月18日は池田市立青少年野外活動センター。事前申し込みが必要だそうです。(ちょっと面白そう)
 外に下りてもう一度住居らしきものを覗いてみる。なにか、ビールが祭壇のようにして置かれている。何かを祭っているのか、それともビール自体を称えているのか。アサヒの発泡酒の缶の赤色が映える。これは絶対後者だろう。ビールありがとうてなかんじだろう。
 芦屋市立美術博物館に二名良日がいて野外活動が芸術に変わった。芸術に野外活動が侵食してきているともいえる。アーティストの仕事とは価値観を逆転させること。他の言葉では「とんち」ともいう。でも、二名良日はただそこで作っているだけかもしれない。それを、逆転させる位置にもってきた芦美こそすごいのかもしれない。なにしろ、小杉武久さんのパフォーマンスをした美術館ですからね。でもそれは、二名良日のバイタリティーがあって初めて成り立つはず。面白いパフォーマーをまた見つけた価値は大きい。また、しばらく暇がつぶせそう。